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総量規制とは?対象外の借り入れやカードローン利用時の注意点を解説

総量規制とは?対象外の借り入れやカードローン利用時の注意点を解説

総量規制とは、貸金業者に対して契約者の年収の3分の1を超える貸し付けを原則禁止する規制のことです。消費者の借り過ぎや、貸金業者の貸し過ぎを防ぐための目的があります。

総量規制に関する情報を把握して、自分が無理なく返済できる借入金額を把握しましょう。

この記事でわかること
  1. 総量規制の意味と必要性
  2. 総量規制の対象になる借り入れ
  3. 総量規制を超えて借り入れできる除外貸付と例外貸付

総量規制とは消費者を過度な借り入れから守る制度

総量規制とは「貸金業法」で定められたもので、貸金業者に対して契約者の年収の3分の1を超える貸し付けを原則禁止する規制のことです。

総量規制が設けられている理由は、消費者による借り過ぎ、貸金業者による貸し過ぎを防ぐためです。総量規制がなく、消費者が返済できる能力を超える借り入れをしてしまえば、定められた日に返済できず、さらに借り入れをするといった多重債務に陥る可能性もあるでしょう。

借り入れの申し込みをする際は、申込内容や借り入れを希望する金額により、収入証明書類の提出を求められるケースがあります。収入証明書類の提出は、貸金業者が「申込者の年収を考慮して、どれくらい貸し付けをしてもよいか」と判断をするために必要となるものです。

総量規制は貸金業者のみに適用される

総量規制の対象になるのは、貸金業者が提供するカードローンや、クレジットカードのキャッシングです。貸金業者とは、お金を貸す業務を行っており、財務局又は都道府県に登録をしている業者のことをいいます。具体的には、消費者金融、クレジットカード会社などが貸金業者です。

銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫などは貸金業者ではないため、貸金業法に基づく総量規制は適用されません。銀行は銀行法など、それぞれの金融機関で定められた法律があり、それにもとづいて貸し付けをしています。

実際の借り入れできる金額は審査によって決まる

「年収の3分の1以下」は総量規制で定められた基準であり、実際に借り入れできる金額は審査で決まります。申し込みの内容によっては、申込者が希望する金額から下回る可能性もあるでしょう。

年収や雇用形態などの申込内容から、現在の借入状況、過去の借り入れなどを総合的に審査したうえで具体的に融資額が決まります。

総量規制を超えた借り入れができるケース

総量規制の対象になるのは、個人が貸金業者から借り入れする場合のみです。

ローンや融資の種類によっては、総量規制の対象とならないものや、総量規制の対象ではあるが状況によっては貸し付けが行われるものがあります。

除外貸付:総量規制の対象外のローンなど

除外貸付とは、総量規制の対象ではないローンや借り入れのことです。

カードローンを利用していた場合でも、除外貸付で借り入れした金額は算入されないため、カードローンの残高に影響しません。このことから貸金業者は、除外貸付に該当するローンであれば、契約者の年収の3分の1を超えた貸し付けができます。

こちらは除外貸付に該当するローン、借り入れの例です。

■除外貸付に該当する例

  • 住宅ローン
  • 自動車ローン(自動車の所有権を貸金業者が取得する、または担保の目的となっているもの)
  • 高額療養費の借り入れ
  • 有価証券担保(※1)の借り入れ
  • 不動産を担保とする借り入れ

※1 有価証券担保:株式や国債などの証券を担保にしてお金を借りること

例外貸付:緊急性が高い・返済能力があると判断された借り入れなど 

例外貸付とは、消費者の利益の保護に支障を生ずることがない貸し付けのことです。

例えば緊急の要件や消費者に必要であると認められた場合は、年収の3分の1を超える借り入れが認められるケースがあります。

こちらは例外貸付に該当するローン、借り入れの例です。

■例外貸付に該当する例

  • 借り換え・おまとめローンのとき:消費者に一方的に有利になる借り換え、借入残高を段階的に減少させるための借り換え
  • 緊急に必要と認められるとき:緊急に必要と認められる医療費を支払うための貸し付け、社会通念上緊急に必要な貸し付け(10万円以下、返済期間は3カ月以内が要件)
  • 配偶者と年収を合算するとき:配偶者と併せた年収3分の1以下の貸し付け(配偶者の同意が必要)
  • 個人事業主を対象とするとき:事業に必要な資金であり、返済能力を超えない貸し付け
  • 銀行貸付のつなぎ資金であるとき:銀行等の預金取扱金融機関から確実に貸し付けが行われることが確認でき、1カ月以内の返済である場合

【総量規制の対象外】銀行はいくら借り入れできる?

銀行は「銀行法」、信用金庫は「信用金庫法」の法律が定められており、貸金業法に定める総量規制は適用されません。消費者の状況によっては年収の3分の1を超える借り入れができる可能性もあります。

ただし、銀行などの金融機関でも総量規制同様に、消費者の返済能力を超える貸し付けをしない基準を設けています。そのため、銀行であれば年収の3分の1を超えて借り入れができるわけではありません。

クレジットカードは総量規制の対象になる?

クレジットカードは、利用方法により適用される法律が異なります。

■クレジットカードの利用方法と適用される法律
利用方法 総量規制 適用される法律
クレジットカード
ショッピング
※リボ払い・分割払いなど
対象外 割賦販売法
クレジットカード
キャッシング
対象 貸金業法

クレジットカードの「ショッピング」とは、商品やサービスを購入することです。ショッピングで分割払いやリボ払いをした際は、割賦販売法という法律が適用されます。

クレジットカードの「キャッシング」とは、クレジットカードを使って借り入れをすることです。クレジットカードにあらかじめ「キャッシング枠」を設定しておくことで、必要なときに現金を借り入れすることができます。カードの申込時以外でキャッシング枠を設定するときは、審査が必要です。

消費者金融や信販会社、クレジットカード会社が発行するクレジットカードを利用してキャッシングした際は、総量規制が適用されます。

総量規制に関する注意点

借り入れを検討している方は、総量規制に関する3つの注意点を把握しておきましょう。

  • 全ての貸金業者からの借り入れの合計額が総量規制の対象になる
  • 必ず年収の3分の1の金額を借り入れできるとはかぎらない
  • 財務局または都道府県に登録されている貸金業者を利用する

全ての貸金業者からの借り入れの合計額が総量規制の対象になる

貸金業者からの借り入れは1社だけではなく、複数社で利用できます。ただし、総量規制は複数社すべての合計借入額(※)が規制の対象となります。

例えば年収300万円の方の場合、A社、B社、C社とすべてのカードローン会社で100万円を上限に借り入れできるのではなく、A社、B社、C社で合計100万円までの借り入れとなります。

※貸金業者各社において借入総額を計算する場合、自社分は「利用可能額」、他社分は「貸付残高」として算出します。

必ず年収の3分の1の金額を借り入れできるとはかぎらない

総量規制は消費者が返済能力を超える借り入れを防ぐためのルールですが、誰でも年収の3分の1の金額を上限に借り入れできるわけではありません。

年収300万円の方が、借入希望額を100万円としてカードローンに申し込んだ場合、返済能力次第では、100万円を下回る融資となる可能性があります。

財務局または都道府県に登録されている貸金業者を利用する

「審査なしで借り入れできる」などと謳っている場合、貸金業者として登録されていない違法業者の可能性が高いです。正規の貸金業者は、必ず審査をしたうえで貸し付けを行っています。

違法業者を利用すると、法律で定められている金利より高い金利で貸し付けをされるなど、トラブルに巻き込まれるリスクがあります。この場合、借り入れをして返済を続けたとしても、元金(借り入れた金額)の一向に返済が終わらず、利息ばかりを支払い続けてしまうおそれがあります。

SNSやインターネットの掲示板では、個人から個人にお金を貸し付ける「個人間融資」に関する投稿もありますが、個人でも貸金業者として登録されていれば基本的に問題ありません。利用する前に「貸金業者として登録されている正規の業者か」を確認しましょう。

貸金業者として登録されているかは、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で確認できます。

総量規制により新たに借り入れできないときの対処法

すでにカードローンやクレジットカードのキャッシングを利用している方のなかには、新たに借り入れをしたくてもできないケースがあるかもしれません。

このようなときは、借り入れよりも返済を優先するか、借り入れをしたい理由で選べるローンを選択する手段もあります。無理な借り入れは、返済の遅延や延滞につながる可能性があるため、慎重に検討してみてください。

返済を優先する

新たに借り入れできないときは、返済を優先することから考えてみましょう。

今の状態では、ほかのカードローンに申し込みをしても、審査に通らない可能性が高いです。そのため、新たに借り入れをするよりも、利用しているカードローンやクレジットカードのキャッシング枠の中で返済と借り入れをしたほうがよいでしょう。

返済を優先するためには、まずは利用しているカードローン会社のシミュレーションを活用して、どのように返済していくか改めて計画を立ててみてください。返済が遅れてしまいそうなとき、返済の相談をしたいときは電話で問い合わせをするのもおすすめです。

すでに複数のカードローン会社から借り入れをしている方は、金利が高いものから優先的に返済しましょう。金利の高いカードローンのほうが、時間が経過するにつれて支払利息の総額が増えやすいため、優先順位をつけて返済することも検討してみてください。

目的別ローンを検討する

目的別ローンとは、住宅ローンや自動車ローン、医療ローンなど特定の目的のために行う借入です。

目的別ローンはカードローンと違い、資金使途が決まっているため、借り入れできる金額も目的に応じて決まります。カードローンのように、返済をすれば何度も借り入れできるという仕組みではありません。カードローンは目的が限定されておらず、事業性のある借り入れ(事業の運転資金や設備投資など)以外であれば、生活費など資金使途は自由です。

目的別ローンは除外貸付に該当します。総量規制の対象外であり、カードローンを利用中の方でも借り入れできる可能性があります。ただし、目的別ローンも審査はあるため、カードローンの利用状況、借入履歴によっては、審査に影響が出るケースもあるため注意しましょう。

よくある質問

総量規制とはどのような制度であるかわかりやすく教えてください

総量規制とは、借り入れを利用する人の年収の3分の1を超える貸し付けを原則禁止とする規制のことです。カードローン会社や消費者金融などの「貸金業者」に対して適用されます。

消費者の借り過ぎや、貸金業者の貸し過ぎを防ぐために設けられました。

銀行カードローンであれば総量規制を超える借り入れできますか?

銀行には「銀行法」が定められており、総量規制の対象外となります。

しかし、銀行も貸金業者同様に、消費者の返済能力を超える借り入れを防ぐために、同程度の基準が設けられています。

消費者の状況によっては、年収の3分の1を超えて借り入れができる可能性はあるかもしれませんが、基準を大幅に超えた借り入れはできないでしょう。

総量規制をオーバーして借り入れをしています。ペナルティなどはありますか?

年収の3分1を超える金額を借り入れできていたとしても、すぐに返済を求められるようなことはないでしょう。

総量規制は消費者を守るためのリミッターではありますが、一括返済や処分といった消費者に対するペナルティはありません。

総量規制を超える借り入れができるローンはありますか?

総量規制の対象外である「除外貸付」の住宅ローンや自動車ローンは、ローンの審査に通過すれば年収の3分の1を超える借り入れが可能です。

「例外貸付」は本来総量規制の対象ではあるものの、消費者の状況や特定の条件を満たすことで借り入れできるケースがあります。例外貸付は、緊急で必要な医療費、ローンの借り換えやおまとめローン、配偶者と年収を合算して借り入れする「配偶者貸付」などがあります。

小宮 崇之
CFP®(公認ファイナンシャルプランナー) / TLC(生命保険協会認定FP) / 損害保険プランナー / 証券外務員一種 / 日商簿記検定2級
小宮 崇之(こみや たかし)
大学卒業後、信用金庫に入社。中立的な立場でお客様目線の営業をしたいという思いから、保険代理店として独立を決意。保険会社の代理店営業職、保険会社の研修生を経て2020年9月に保険代理店を設立。
保険代理店の実務経験を生かして、執筆業や講師業も行う。
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