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家計の収支バランスの図り方 その2

家計の収支バランスの図り方 その2

前回、Aさんの家計のバランスシートは、不動産や金融商品の価値を、購入したときの金額で作成しました。
このやり方は、手間がかからず簡便ですが、これでは各資産の現在の価値(時価)はわかりません。
そこで、今回はAさんのバランスシートを、時価(※)で作成してみます。

バランスシートを時価で作成する方法

【図1】Aさんのバランスシート

(2009年8月31日時点 単位:万円)

【資産】

流動資産
  • 現金
    10
  • 預金
    • 普通預金
      50
    • 定期預金
      500
    • 外貨預金(ユーロ)
      200 (150)
  • 投資信託
    400 (300)
  • 国債
    100
固定資産
  • 自宅(土地付一戸建て)
    3,500 (4,500)
  • 自動車1台
    100 (230)
  • 家具類
    10 (100)

【負債】

  • 住宅ローン
    4,200
  • マイカーローン
    150
  • フリーローン
    150
負債の合計
4,500B

【純資産】

  • 【4,870A−4,500B
370ア (1,440)イ
総資産
4,870A(5,940)
合計
4,870

※( )の値は、前回(その1)のバランスシート上での値

前回(その1)と時価でのバランスシートとの違いで注目すべきは、【純資産】アイです。
購入したときの金額で作成したものは純資産が1,440万円イでしたが、
時価で作成したものは、なんと純資産が370万円アになっています。

外貨預金と投資信託が購入時よりも価値がプラスになったものの、自宅や自動車などの固定資産が、購入した当時よりも大きく価値が下がっているからです。Aさんの家計の実態としては、資産と負債を清算すると370万円しか手元に残らないことを意味します。

これでは負債と純資産のバランスが少し心もとないですね。将来の安定した生活を目指すのであれば、このバランスを改善、つまり負債のスリム化を図る必要があります。

例えば、Aさんのバランスシートにおいて、運用で増えた外貨預金と投資信託の600万円分をローンの返済に回すとどうなるでしょうか。

ローン返済をした後のバランスシート

【資産】

流動資産
  • 現金
    10
  • 預金
    • 普通預金
      50
    • 定期預金
      500
    • 外貨預金(ユーロ)
      0
  • 投資信託
    0
  • 国債
    100
固定資産
  • 自宅(土地付一戸建て)
    3,500
  • 自動車1台
    100
  • 家具類
    10

【負債】

  • 住宅ローン
    3,900
  • マイカーローン
    0
  • フリーローン
    0
負債の合計
3,900D

【純資産】

  • 【4,270C−3,900D
370ウ
総資産
4,270C
合計
4,270

アウを比べてもわかるように、実は負債を減少させても純資産の金額は変わりません。ただし、負債が減った分だけ、相対的に純資産の割合が増えることになります。

家計のバランスシートでは、純資産の金額そのものを増やすことも大切ですが、実は総資産に占める純資産の割合(純資産比率)を高めることが重要なのです。

まとめ

ちなみに(図1)でのバランスシートの純資産比率は、約7.6%【純資産ア370万円/総資産A4,870万円×100】で、ローンの返済をした後の純資産比率は、約8.7%【純資産ウ370万円/総資産C4,270万円×100】と、負債のスリム化を図ることで純資産比率が上昇しています。

この純資産比率は家計の安定性を図る上で、ひとつの重要な指標といえます。純資産比率が低いと、収入が安定しているうちは問題ありませんが、収入が減少するとたちまち負債が資産を上回ってしまいます。一定期間ごとに家計のバランスシートを時価で作成し、家計の安定性をチェックすることが大切です。

※時価で評価する際は、以下のポイントを参考にして下さい。

外貨預金はシート作成時のTTB(外貨を円に換金する際の手数料込のレート)で換算する。
投資信託は日経新聞の投資信託基準価格一覧で換算する。(保有口数/10,000×基準価格)
ただし、わからない場合には購入した金融機関に聞く。
不動産については、もしだいたいの価格がわからなければ、近隣の同じような物件がいくらで売られているかインターネット等で調べるか、近くの不動産会社などに聞く。
家具は購入価格の1割程度、骨董品などについてはわからなければゼロにしておく。